第12章 【兄妹だから】
その美沙の義兄である力は放課後、部室で着替えている時に日向から事の報告を受けた。
「縁下さん、美沙って顔固いけど親切ですねっ。」
「え、えと。まあ人は悪くないと思うけど。」
顔固いが一言余計であるが相手が日向なので何も言うまいと力は思う。
「俺今日制服のシャツのボタン取れちゃって、同じクラスの奴に針と糸持ってる奴もいなくて、5組行ったら美沙がつけてくれたんですっ。」
「あ、ああ、そうなんだ。」
流石の力も義妹が裁縫道具を持ち歩いているなどとは知らなかった。
「マジ助かりましたっ。きっとあいつ、縁下さんに似たんですね。」
「い、いや日向、俺逹本当の兄妹じゃないし。」
しかし日向は何も考えている様子もなく言った。
「でも縁下さんの妹でしょ。だから似てるんですよ。」
「えーと。」
義妹を褒めてくれるのはいいが力は言葉に困りしばし考える。
「ちょっと日向、言ってることがまったくもって筋道立ってないんだけど。縁下さんも困ってるじゃん。」
月島が呆れたように口を挟む。
「何でだよっ、だって縁下さんいい人じゃん、だから美沙だって。」
「だからそこが間飛んでておかしいって。」
「いいよ、月島。」
しばし考えてから力は言った。
「そうかもしれないな、ありがと、日向。」
日向はえへへと笑い、月島はちょっと縁下さんと呟く。
「いいんだよ。」
力は微笑んだ。
「言われてみりゃ確かに俺らは兄妹だし、多分影響受けてるって事を言いたいんだろ。美沙のはもともとだと思うけどな。」
よくまぁそこまで読み変えられますね、と月島は呟き、力は日向に再び言った。
「ところで日向、今回は良かったけどもし谷地さんもうちの美沙もいなかったらどうするつもりだったんだ。」
「あっ。」
「自分でも何とか出来るようにしとこうな。」
「はいっス。」