第50章 【付き添い】
「あーでも今回は仕方なくね。」
木下が言い、
「うん、メンツがメンツがだもんな。」
成田がうんうんと頷く。
「西谷に日向のお子様コンビに、箱入り娘の美沙さんじゃあちょっと。」
「と言うかうちの美沙もどうかすると子供っぽいから。」
「それじゃなおさらだな。」
「一仁っ、てめーっ誰がお子様だっ。」
「自覚なかったのか。というか俺にまで突っ込ませるなよ、西谷。」
「なー、ただでさえ縁下がアレなのによ。」
「木下、どういう意味だ。」
ここで珍しく笑いを堪えようと静かに努力をしていた田中がとうとう腹を抱えて笑いだした。
「ブハハハハハハッ、やっべえ、付き添い付きのザリガニ釣りとか想像しただけですんげえ図になりやがったっ。アーハハハハハハッ。」
「龍っ、てめえも笑うんじゃねーっ。」
「無理無理、縁下が付き添いでおめーら3人がザリガニ釣りしてる様とかシュール過ぎるわっ。」
「田中うるさい、俺だって好きで付き添いするんじゃないから。」
「でも半分は好きで付き添いだよな、妹いるもんな。」
「木下、お前どっちの味方なんだ。」
「それよりみんな、いい加減にしないと大地さん達に怒られるぞ。」
成田に言われて力以下、2年連中は流石に静かになった。
3年連中は怒っていなかった。
「2年達どうしたんだろ、何か楽しそうだな。」
東峰が呑気に言う。
「どうせ西谷と田中がまた馬鹿なこと言ったんだろ、で、成田と木下が縁下に突っ込んでるってことは多分美沙ちゃん絡んでるな。」
菅原がなかなか鋭い視点を展開した。
「よくそこまでわかるな、スガ。」
澤村が感心する。
「今更何言ってんだよ、大地ー。縁下が突っ込まれてるってことは美沙ちゃんの事で縁下が何か面白いこと言っちゃったに決まってんじゃん。」
「ああ、そうか。縁下はすっかり美沙さんに夢中だもんな。他は今までと変わらないけど。」
「美沙ちゃん、ああ見えていい子だもんな。」
しみじみという主将とエースに清水がボソリと言う。
「美沙ちゃんは可愛い。」
「清水最初に会った時も言ってたよな、清水がそこまで言うなんて珍しいじゃん。」
菅原に言われて清水は首を傾げる。