第5章 【関西弁使用許可1年編】

月島と山口については別の日の昼休み、屋上で美沙がたまたま遭遇した時に話がついた。

「あ、美沙さん。」
「ああ、山口、月島。そっちも昼飯か。」
「昼飯て言い方、あんた一応女子でしょ。」

月島に指摘されて美沙は顔を赤くしあからさまに目を反らす。

「女の子っぽい言い方出来ないんだよ、自分で言ってて寒気走る。」
「ふーん、つーかさ」
「どした。」
「あんたさ、元々関西弁なんだって。しかもクラスじゃ谷地さんだけに使ってるらしいじゃん。何なの、縁下さんの命令。」
「えと、別に。兄さんはそんなこと言わないけど。」

月島は何やらモヤモヤした顔をしている。

「どうした、月島。何か私妙なこと言ったか。」
「もうさ、喋りにくいなら素直に元の言葉にしたら。聞いてる方が疲れる。」

月島の意外な言葉に美沙はキョトンとする。

「ええんか。」
「よっぽど土地の人でないとわかんない言葉じゃないなら。あんたは柄悪い言い方してないみたいだし。」
「ありがとう、月島。」

月島はそっぽを向いて別にと呟く。

「因みに山口は大丈夫か。」

美沙は標準語に切り替えて後ろに隠れ気味の山口に尋ねる。

「俺も別に。」
「本当か。無理されると私も辛いんだが。」
「いや、俺も美沙さんがそうやって切り替えるの大変そうで聞いてて辛い。」
「ええ人やな、ありがとう。ほなよろしく。」

こうして美沙は排球部の１年生達と関西弁で話す形となった。

次章に続く