第38章 【勉強会】
結構遅くまでああでもないこうでもないとやっている間に6人は疲労困憊(ひろうこんぱい)していた。田中と西谷は今度こそ座ったまま屍状態から動かず成田と木下もちゃぶ台に突っ伏し力は仰向けにゴロリ、美沙はその横に転がり半分寝ている。
しばらくこいつらはそうしていたがそろそろ帰らないといけない連中ばかりだったのでヨロヨロと動き始める。
「美沙、起きな。」
上体を起こした力が義妹に声をかけるが義妹はいつかのようにんーと、うなるだけで起きる気配がない。
「起きろ、帰るぞ。」
美沙はんーと言うばかり、前より寝起きが悪い。
「マジで寝起き悪っ。」
木下が声を上げる。力は困ったなと呟き美沙を揺さぶった。美沙は起きようという努力は見せるがあまりうまくいっていない。
「このままじゃ田中んちに泊まりになっちまうな。」
成田が心配そうに言う。
「ねーちゃんは喜ぶだろうけどよ。」
「冗談じゃない、うちの美沙を置いとけるか。」
「マジレスすんなっ。」
「力、飯で釣ったらどうだ。」
「美沙はザリガニじゃない。」
「自分は野良猫扱いした癖に。」
「木下うるさい。」
力は返して、さてと呟く。
「ちょっとお前ら耳塞いで向こう向いてて。」
残りの野郎共は不思議そうな顔をするが指示に従う。力はそれを確かめると美沙の方に戻る。
「二回目だから効くかどうか微妙だけど。」
力は独り言をいってなかなか起きない美沙の耳元で囁いた。
「いい加減にしろ、人前で抱っこするぞ。」
効果覿面(てきめん)だった。
「嫌やっ堪忍してっ。」
美沙はガバッと起き上がった。
「いい子だね、ほら帰り支度して。」
「はい。」
美沙は慌てて教科書や文房具を鞄に放り込み、ガジェットケースを肩にかける。力は野郎共の肩を叩きもういいよと合図をしてから自分も帰り支度をする。
「おい、縁下よ。」
田中が言った。
「前体育館で妹寝た時もそーだっけど何言ったんだ。あいつ顔真っ赤じゃねーか。」
「教えない、特にお前と西谷には。」
「何で俺もなんだよっ。」
「すぐ喋るから。」
ここで成田と木下が冷や汗を流して顔を見合わせていたことを力は知らない。