第33章 【美術館】
「縁下ー、なーにニヤニヤしてんだよ。」
休み明けの部活、菅原に言われて力はビクッとした。
「お、俺別に。」
「顔に出てるっての。さては休み楽しんだな。」
「からかわないでくださいよっ。」
「いーじゃん、教えろよ。」
菅原はニヤニヤしながら言う。もう、と力は呟いて周りに目をやる。田中や西谷は他と話していてこっちには気づいてないようだ。
「楽しみましたよ。」
力は言った。
「巨匠の本物って凄いですよね。あと、ああいう静かなとこに行くのもいいもんです。」
「それだけかー。」
「美沙がすごく嬉しそうで。外でそうなってるのが新鮮でした。」
ふふふーんと菅原が面白そうに笑う。
「お幸せに。」
「だからっ、そういうのは勘弁してくださいって。」
力は声を上げる。
「往生際が悪いよ、縁下。」
いつの間に来たのか成田が後ろから言った。
「ちょっ。」
「そのシスコンぶりで言い訳できねーって。」
「木下、お前もかっ。」
「はいはい、ごちそーさまでした。」
「菅原さんっ。」
こうして力はしばしの間弄られたのだった。
次章に続く