第30章 【及川の助言】
「岩ちゃん、きーたっ。お友達に昇格したっ。」
「意味わかんねーわっ、今までは何だったんだっ。」
「お友達よりちと遠い知り合い。」
美沙が呟く。
「既にいけすかねー奴から昇格はしてたんだな。」
「ちょっと岩ちゃん、何てこというのさっ。」
「今までのてめーの言動で友達に昇格してることに驚くわっ、このボケッ。」
「ひっどいなー、もう。ところでさ、美沙ちゃん。」
突然切り替えた及川に調子を崩された岩泉がてめえこのやろと怒鳴るが及川はスルー、美沙は言葉に困って岩泉に申し訳なさを込めたしょぼんとした表情を向ける。岩泉は美沙の表情を見ておめえのせいじゃねえよと呟き落ち着いた。スルーをした及川はそのまま話を続ける。
「気持ちはわかるけど逃げらんないよ、今日のことは結構根が深い。本当は自分でもわかってるでしょ。下手に隠すと後が怖い、親御さんにはなるべく早く相談した方がいい。君が死にたくなるレベルになったら手遅れだ。」
真面目な話だったので美沙は真面目に聞いて頷いた。
「それこそおにーちゃんが泣くよ。」
美沙はもう一度頷いた。
「いい子だね。」
義兄以外の人に言われて美沙はビビる。
「どうしたの。」
「兄さん以外に言われてびっくりしてもた。」
及川はへぇと言ってずっと掴んだままの美沙の腕を離した。
「やっぱ縁下君ずるい。」
「何言うてはるのん。」
「ほっとけ、野郎の醜い嫉妬だ。」
何だかよくわからないと美沙は思ったがとりあえず付き合ってもらった礼を言って青城組と別れ、帰路に着いた。
家に着いてから美沙は及川の助言に従い、義母に事を正直に言った。義母が取り乱して大変心配したことに胸が痛んだが逆に自分はやはり大切にされていることも改めてわかった。とりあえず今はまだ確証がない為、しばし静観になったが何かあったら絶対言うように厳命された。
次章に続く