第27章 【料理】
やり過ぎたなと力は内省する。流石の義妹も怒ったかもしれない。程なく義妹は戻ってきて自分も林檎を食そうとした。
「あ、ちょい待ち。」
力は座ろうとした義妹を留めて自分も立ち上がる。美沙が視線を横に逸らした。次どうなるか勘付いたのか。そして多分それは正しい。
「兄さん、なんぼほど抱っこするん。」
明らかに照れた様子で美沙がモゴモゴ言った。
「してもいい間なんぼでも。」
美沙は兄さんがアホの子になったと呟く。
「そのアホの子にすりすりしているのは誰だ、本当は甘えん坊の癖に。ツンデレって言われてないか。」
美沙は黙ってすりすりぐりぐりしてきた。
「言われたのか。」
美沙はうーと唸る。
「だいたい誰に言われたのか見当つくよ、やれやれ。」
頭を撫でてやりながら力は言った。
「事実は仕方ないけど。」
「兄さんが意地悪や。」
「はいはい。」
「自分でドM言うてるけど絶対逆や。」
「もっとイジメようか。」
美沙は嫌やっと叫んで離れようとしたが残念ながら力に逃がすつもりは全くなかった。
「そして今日は愛妻弁当ラストか。」
「木下、最近お前まで何なんだ。」
昼休みの事である。男子排球部2年の野郎共は一緒に昼食にしていた。
「だって、なぁ。」
木下は成田に同意を求め、成田は頷く。
「美沙さんが来てからここまでのお前の溺愛ぶりを見てたら仕方ないよ。」
「そこまで言うか。てゆーか一応兄妹だからな。」
「一応。」
田中が何か言いたそうにボソリと言う。
「よくわかんねーけど良かったじゃねーか、力。うまそうだぞ、弁当。」
「美沙が聞いたら喜ぶよ、ありがとう。でもその出汁巻き卵はやらない。」
「ちっ。」
西谷がつまらなさそうに言う。
「今度作ってって頼んでみれば。多分あいつやってくれるよ。」
「マジかっ、よっしゃ。」
「おい縁下よ、言うならんな仏頂面すんなって。」
田中がクスクス笑う。
「おめーそのうち妹嫁にするとか言うんじゃねーか。」
「うちの場合出来るのかな。」
「待てコルァっ、そこは流石に突っ込めっ。」
「成田、やばくね。縁下が田中に突っ込まれてるぞ。」
「俺も心配になってきた。調べたりしないだろうな。」