第13章 HELP 花京院
「僕の事なんてわからないだろ」
花京院はそう呟いて、隣に座っている亜理紗を見た。
「…わからなくないよ」
「僕は君が嫌いだ」
この台詞はもう何度も亜理紗にたたきつけている。亜理紗もその言葉を聞きなれているのか、特に濃い返事はしなかった。ただ、頷いただけ。
「だけど、僕は独りが嫌いだから、どうすればいいかわからない」
「じゃあ一緒にいようよ」
「…ああ」
花京院も亜理紗も、ただそれだけの会話をして立ち上がった。
「でも、1人がいい」
「知ってる」
お互いが、独りを嫌って2人でいるが、1人でいたいことを主張する。
付き合っていない、友達でもない、でも大切な人だ。だからこうしてたまに2人きりで話をして、それで帰る。
「…僕のことが嫌いか?」
「好きだよ」
「そっか」
ただこれだけの会話を毎日毎日繰り返す。
「…そうだな、僕ももしかしたら好きかもしれない」
「よくわかんないよ、花京院」
「僕もよくわからないんだ。ハッキリしない自分が嫌いだ」
そうして花京院は亜理紗を残して先に歩き出す。それに追いつくか追いつかないか、遅すぎないタイミングで亜理紗も歩き始めた。
決して横にはならばない、花京院の横には立たない亜理紗。
「こっちにおいでよ」
「…ちょっと、遠いなあ」
突き放せ会えない2人は、独りがいやな1人ぼっち同士だった。
END