第5章 今剣 そして、二度目の出陣
【あははっ!うえですよ!】
今剣の履いている下駄は、高さがある。そんな物でよくあんなに跳べる…。
地上から結構離れたところまで跳んでいる今剣を、口を開けながらウチは見ていた。
「凄い…。」
流石、義経公が主の刀。義経公の逸話と同じ様な、まるで天狗の様な今剣。
思わず、呟いてしまった。
敵の背後を取り、そこから一気に刃を突き刺す。それが止めになったのか、敵は苦しげに声を上げ、動かなくなった。
敵から沢山血が溢れてくる。見ているだけでも、あの鉄と生臭い匂いがしている様な気がする。返り血で赤く染まる。
これは…洗うのが大変だ…。目の前で否、画面の向こうで平然と人では無くとも生物を殺せる彼らに恐怖を抱いた。怖いと感じている事を誤魔化すようにそんな事を考えてしまった。
「…後は一体…。」
加州が相手をしているモノだけだった。加州も肌蹴ている。真剣必殺が出るのも時間の問題だ。
【ははっ…。】
耳元に笑う声が聞こえる。この声の低さから、加州の笑い声だと分かった。実際、画面の向こうでは瞳孔が開かれた目で敵短刀を捉えていた。
【俺の裸を見る奴は…死ぬぜ…!】
昨日同様、真剣必殺が発動した。
刀を右手に持ち、低い体勢で敵との距離を縮める。相手は宙を浮いてるし、移動できるから、楽々加州の背後を取る。
これで止めだ、そう言わんばかりに刃が加州を襲う。
「危ない!!」
画面の向こうで叫んでしまった。インカムの電源入ってるのに、聞いてる人は相当な大音量を聞いたかもしれない。
でも、そんな事気にしてられなかった。だって、このままじゃ…殺されるんじゃん…。
【何が危ないんだよ…煩いな…。】
背中に目が有るんじゃないかっていう位、正確に敵の首?を素手で掴み、地に押し付ける。
押し付ける力が強いのか、口から短刀を落とす。加州は相手の頭を狙って、刃を突き立てる。その顔は片方の口角が上がった笑顔を浮かばせていた。
【バイバイ…。】
敵短刀はギラリと太陽にあたり光る刃に、身を捩らせながらもがいて、加州の手から逃げようとする。
そんな事は許さない、めいいっぱい刀を上げ一気に振り下ろす。加州の周り、服、当然顔全体に敵の返り血がべっとりと付く。
相手は数秒ののち暴れ、苦しんだが、動かなくなった。
ウチはそれを、黙って見ているしか出来なかった。
