第4章 初鍛刀
渡して数秒経ったのち、式神がウチに一振りの刀を渡して来た。
それは、加州の本体とは明らかに大きさも軽さも違う。小さくて、軽い。
「短刀…?」
しっかりと鞘に収まっているそれを、マジマジと見る。でも、視界が霞むような…。
目が疲れているのかも、そう思って目を擦る。
「…どうかされましたか?」
「いや、何でもないよ。」
口では心配してそうな台詞を言っているこんのすけに、そう返事して、手に持つ短刀を鍛刀部屋にある机に置いた。
「取り敢えず、昨日と同じ手順でやればいいんだよね?」
「はい。」
新しくこの本丸に来たこの短刀を起こす為に、扇子を取り出す。
何だか頭も重いような…。鍛刀してから、体が変だ…。
「ねえ、大丈夫なの?」
「何が…?」
開いた扇子を短刀の上に翳そうとした瞬間、後ろから加州に話しかけられた。
「顔色が悪い。そうしか言えない程の顔してるよアンタ。」
眉を八の字に下げた表情で言う彼。鏡が無いから、自分がそんな顔しているのか分からない。
顔に感情が出易いなんて言われるし、自分でも自覚してるけど、そんなに?
「大丈夫。」
「大丈夫って!?それで万が一の事が遇ったってさ、助けーー、」
そんな加州の言葉なんて気に留めず、目を閉じ、この刀を起こす作業に入った。
加州の時同様、丸まって寝ている人の姿を見つける。
「起きて。」
ウチが一言言えば、刀は光り、桜の花弁が舞う。刀が起きる。
「起きましたね。二振り目の刀剣が…。」
ボソッと呟くようなこんのすけの声が聞こえる。何処か嬉しそうな声音なんてどうでもいい。
そんな事よりーー、
「ウッ…。」
頭が猛烈に痛い。鈍器で思いっ切り殴られたような痛み。
あまりの痛みの強さ、体の怠さに今まで立っていられたのに、座り込んでしまう。
「おい!!」
(昨日は感じなかったのに、何で…?)
ヒールのコツコツという音に、加州が近くに来るのが分かると同時に、別の音が目の前でした。
音の正体を知りたくて、痛みに耐えながら、顔を上げる。
目の前には今、降り立ちました、そんな体勢をとっている一人の少年。
「ぼくは、今剣!よしつねこうのまもりがたななんですよ!どうだ、すごいでしょ!」
灰色の長い髪、赤い二つの眼。平安の貴族が着ていそうな和服。
これが、ウチの二振り目の…