第45章 クロロ=ルシルフル《5》
『浮気者』
「あれは作戦の上で仕方のないことだったと一体何度言わせるつもりだ」
目を合わせず頬を膨らませる私に彼は大きなため息をつく
窓から差し込む月に照らされた彼の喉元には見せつけるように咲いた赤い跡
昨夜、作戦の内だからとどこかの貴族のお嬢様と楽しいひと時を過ごしたらしい
『いくら作戦でも浮気は浮気だよ!そんな跡なんか付けてきて!!さぞかし楽しかったんでしょうね!!』
「……お前がそれを言える立場か?」
『ひゃっ⁉︎何⁉︎』
後ろから私を包むように抱く彼はその長い指を首に這わす
ゆっくりとしかし私が最も触れて欲しくない方向へと確実に向かうその手を止めよともがく
やはり男と女。
力の差が邪魔をする
「……俺はこんな跡を残した記憶はないぞ?」
『し、仕事で……仕方なかったんだもん。。。』
「ほう、仕事か」
うなじにある跡を強く引っ掻かれ小さな悲鳴が口から漏れる
「少しお前を甘やかしすぎたらしいな」
その声は低く怒りに満ちていていつの間にか床へと押し倒された私は潤んだ瞳を彼に向けるしかできない
「、お前はどんな風に叱られたい?」
口角を上げて微笑む彼
その喉元には擦れた赤い絵の具の跡
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《『最近彼が構ってくれなかったのも全ては念入りに仕組まれた彼の仕組み』》
H27.3.19