第44章 イルミ=ゾルディック《6》
夜空を月に照らされ長髪の人が走り去る
『あぁ、綺麗だな』
窓際に頬杖をつき緩みきった顔でその人を見つめる
性別も歳も分からないよって、彼と呼ぶべきか彼女と呼ぶべきかもわからず
”長髪の人”などという見たままの名前で呼ばせてもらっている
『あれ?こっち向いてる?』
なんとなく目があった気がして急いでカーテンを引っ張る
毎夜毎夜見ていたとばれたら恥ずかしいことこの上ない
「ねぇ、俺のこといつも見てるよね?」
『うわっ!?』
閉めたはずの窓は大きく開き冷たい風でカーテンがはためく
月を背に立つ長髪の人の目は猫目で
近くで見ると一層艶やかな黒髪は風でこすりあいサラサラと音を立てている
『。。。。綺麗』
「え?」
つい口からついて出た言葉は何度も何度もつぶやいた言葉
”触れてみたい”
まるで人形のような彼を眺めているとそんな感情に襲われたが
今はそれよりもこの状況だと頭を小さく振り頭を冷静にする
『えーーっと、、どちら様でしょうか』
「俺がさきに言ったよね?だから先に俺の質問に答えて」
『あ、はい。』
表情一つ変えずに話す姿はより、人形らしさを増加させる
それにしてもなんと答えればいいのか、、
どう言おうと変な奴に見られることはほぼ間違いない
なら、いっその事本心を言ってしまおう
『あ、あなたが綺麗だったですから。つい、、眺めていたくなりまして、、見て、、いました、、』
「ふーん。変わってるね、君」
『うっ。はい、』
なかなか言葉がまとまらず結局変な言葉遣いになり余計に変な奴になった
彼が片手を顎に当て考える仕草をしている、その時間がかなり長く思えた
「気に入った。」
『はい?』
数分間、いや、数秒間かもしれないが
まぁ、少しの沈黙の後放たれた言葉に耳を疑った
彼は白く筋肉質な腕を伸ばし床にしゃがみ込んだ体勢だった私を引き上げそのまま抱き上げる
「君、名前は?」
強い風が赤く火照った頬を撫でていく
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《「俺の嫁になりなよ。まぁ、拒否権なんて存在しないけど」》
H27.3.15