第40章 フェイタン《6》
ある日の昼下がり
日の当たらない地下室が私の愛する彼の部屋
『フェイタン〜好きだよー』
「そうか」
ベッドに寝転がり椅子の上でページをめくる彼に視線を送る
構って欲しい
その想いは伝わっていないのか彼の視界には本しか写らない
『暇ー』
「そうか」
なんの意味もないが簡素な部屋に掛けてある時計に目を向ける
短針は2を指していた
私がこの部屋に来たのが1時30分ぐらいだったため約30分ほどこのやり取りをしているのか
時間を見ると何故こうも疲れが増すのだろう
流石にこれ以上粘る気にもなれずベッドから飛び降りる
『あー、もう!出かけてくる!!じゃあね!!』
出口に向かい進む足を止めるなんて命令を脳が出したわけではないのに止まった私の足
彼に手を強く捕まれそこから先は進めなかったのだ
『私は出かけるんですけどー』
「ハァ。おまえ、何おこてるか」
大きなため息の後に発せられた言葉は思いもしない言葉で驚き、怒り、悲しみ全ての感情が混じり合った
『本の方が大事なんでしょ!』
睨みつけ大きな声で叫ぶ私を前に彼は首をかしげる
元から細い目がさらに細まり眉根に皺がよる
「いつワタシがそんなこといたね?」
『キャッ!』
勢いよく手を引かれ彼の胸元に収まる
そのまま上を向いた私の額に柔らかい感触
「ワタシがこれ読み終わるの大人しく待てたらもといいことしてやるね」
妖艶に微笑むその姿に小さく頷く
この体勢が気に入ったのか私を胸に抱いたまま本を読み始める
ご褒美をもらうために大人しく待つ私は彼にかなり心を掴まれているなと思う
H27.3.12