第37章 クロロ=ルシルフル《4》
薄暗い店内でピアノの音が鳴り響く
店には多くの客が来るためカウンターでマスターと話をしながら甘いカクテルを飲む人もいれば
隅の人目につかない席で何やら怪しげな交渉をしている人もいる
「相変わらず、そんなものに時間を使っているのか」
一曲弾き終え店外で夜空を見上げていた私に話しかけるのはスーツ姿の男
あぁ、久しいな。
背後から聞こえたその声は数年前に別れた彼の声で
『ふふ、久しいね。クロロくん』
つい、笑みがこぼれてしまう
そんな私とは対照的に不機嫌さをあらわにしている彼は再度私に問いかける
「相変わらず、そんなものに時間を使っているのか」
『、、、使っているよ。クロロくんのいうそんなものにね』
そんなもの=ピアノだということは過去に痛いほど理解した
珍しく赤い満月を見上げながら彼の返事を待つ
まぁ、彼が何と言うのか大体の予想はつくのだが
「お前には力がある。こんなところより裏の人間として働いた方がよっぽどかせげるだろ」
『裏で働くのはやめたんだよ。一体何度言ったら理解してくれるんだい』
雲が徐々に月を隠していく
少しの沈黙の後小さな溜息
「俺とこい。蜘蛛でその力を活かせ」
この有無を言わせないような彼の声は苦手だ
思わずうなずきそうになる
『やだ。私はピアノで生きていく』
そう決めたんだよ
一言そうつぶやき私はクロロくんに微笑む
赤い満月が雲に隠れあたりが暗くまであと数秒
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〈『マジックアウト(消える魔法)』〉
クロロくん。君から逃げるために作った念はどうかな?
H27.3.10