第34章 ヒソカ《5》
「ただいま、❤︎」
『おかえりなさい。アラン』
すっかり耳に馴染んだ彼の声
目が見えない私が頼れるのは耳だけ
『今日もお仕事お疲れ様。ご飯温めてきましょうか?』
「いや、いいよ♠︎」
そう言って立ち上がろうとする私をそっと抱きしめてくれるのはアランじゃない誰か
”アランは死んだ”
そんな事とっくの昔に気づいていた
『どうしたのアラン?今日は甘えたさんね』
小さく微笑みゆっくりと髪を撫でる
触れてみればわかる彼がアランじゃないことぐらい
いや、声を聞いた時点でわかってた
「君が僕のそばから居なくなるような気がしたんだ♣︎」
必死でアランの真似を続ける君に一体どんな利益があるの?
なんて疑問は口にすることなんてできない
震えた声と共に私を抱く手に力がこもる
『私はどこにも行かないわ』
彼の背中に腕を回し強く引き寄せる
私と君は同じ事で悩んでいる
互いに互いが居なくなるのでは?と悩んでいる
『愛してるわ。アラン』
「僕もだよ。♦︎」
柔らかい唇同士が触れ合う
《『君をアランの代わりにしてごめんなさい。でももう少し、もう少しの間私のアランでいて。。。』》
そんな想いが水となり頬を伝う
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《『愛してるわ。ヒソカ』》
H27.3.6