第32章 キルア=ゾルデイック《3》
コツン、コツン、と大人っぽい高いヒールを鳴らし歩く
”7年間”
一目惚れした彼にまた会いたくて
その思いを胸に秘めて今日この時までずっと天空闘技場にいた
「さぁー!今日はあの幼き死神の試合です!!皆さんどうぞ楽しんでください!」
いつものようにアナウンサーが私の紹介をする
いつものように私は客席を見渡す
スポットライトの光で体が熱い
彼に会えないのならさっさと終わらせてしまおう
「あ!もう始まっちゃってるよ!」
「ゴンが用意すんのおせぇからだろ!!」
周りの音が聞こえなくなりまだ幼さが残る声のみが聞こえる
あぁ、間違えるはずがない
この声はあの時の声だ
《「お前、何してんだよ」》
《「これ?チョコロボくんって言うんだよ美味いぞ!も食うか?」》
《「俺、今日でここから出る」》
目が合う。
相変わらずくせ毛の彼は恥ずかしそうに頬を掻き視線をそらす
「キルアー!早く座ろう!!」
「てめっ!おいてくなよ!!」
《がんばれ》
動いた口が音を発することは無かったが見ただけでわかる
『、、、、うん。がんばるよキルア』
小さく呟き正面を向く
さぁ、さっさと試合を終わらせてしまおう
君に会うために今日この時までがんばってきたんだよ
試合が終わったらまた私の名前を呼んで
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