第19章 フェイタン《3》
『つかれた』
不意に口をついて出た言葉は殺風景な彼の部屋で響く
その言葉にこの部屋の主、フェイタンは首を傾げる
「いきなり何いてるね」
そういった彼の手には真っ赤な爪が。
彼の前にある椅子に座らされているのは先ほど捕まえたフェイタンの拷問相手
そいつが懇願するように私を見つめる
『モノを口にするのがつかれた。息をするのがつかれた。生きるのがつかれた』
「………死にたいてことか?」
布団の上に身をなげる
目に入るのは灰色の天井のみ
『死にたいかー。なんか違うな〜』
「何が言いたい。はきりするよ」
『はっきりねー』
ついさっき見た懇願するあの目が頭をよぎった
”たすけてくれ”
そう思うあいつは何か生きなくてはいけない理由があるのだろうか?
『ねぇ、私の生きなくてはいけない理由ってなんだろ?』
「そんなことワタシが知るわけないね」
イラつきを含ませた声で答えた彼をちらっと見てみる
眉にしわを寄せ凶器と化した手でいっきにあいつの心臓を貫いた
最後の最後まで助かりたいと必死だったあいつの生きなくてはいけない理由は何なのか
どうやらその疑問はもう解けないようだ
『生きなくてはいけない理由がないと生きてる価値ってないのかな?』
いつの間にか隣に座っていた彼に問いかける
「お前は理由がないと死ぬのか?」
疑問に疑問で返されるとは。。。
フェイタンの少し弱気な声を聞きながら彼への答えを探す
『……わからない』
探しても探しても出てこない答たえ。
新たな疑問が出てきたことに少し苛立ちを覚える
「理由が必要ならワタシがつくてやるね」
そういって頭を撫でる彼の手は優しくて心地いい
「お前はワタシのそばに入いるために生きるね。」
『フェイタンのそばにいるために。。』
「わかたか?それが今日からお前の生きなくてはいけない理由ね」
怪しく妖艶に微笑む彼はいつもとは考えられないほど優しく優しく、愛おしそうに私を抱きしめる
『わかった。私はフェイタンのために生きる。。』
彼がいなくなるその日まで私は生きていなくてはいけない
それが私の生きなくてはいけない理由だから
H27.2.15