第100章 【夏ver.】クラピカ
『ねぇ、まだ?』
「後少し我慢してくれ」
連れて行きたいところがあると目隠しをされ手をひかれる
足場があまり良くないらしくよろける度
"すまない。横抱きで良ければ抱いて行こうか?"
と言われるが流石に恥ずかしいため遠慮する
「ついたぞ。目をあけてくれ」
『うん。……船?』
目に入ったのは提灯をぶら下げた船
どこかで見たことがあるようなそれはゆらゆらと川の上に浮いている
頭の中でぐるぐると考えていると隣の彼はクスリと笑う
「これは屋形船なのだよ。中に食事を用意してある、ゆっくり寛いでくれ」
『まぁ、ありがとうクラピカ』
「礼には及ばない、私がに楽しんでもらいたいがためにやったことなのだから」
優しく微笑み再び手を引かれて屋形船に乗り込む
最初に目に入ったのは長机の上の色とりどりの食事
それに続いて座り心地の良さそうな座布団がずらりと並ぶ
『これ……全部クラピカが用意してくれたの?』
「あぁ、気に入ってもらえただろうか?」
『もちろんよ!本当にありがとう!』
感激のあまり彼を強く抱きしめ歓喜の声を上げる
珍しく私から触れたためか彼は頬を赤くしそっぽを向いた
バンッ バンッ
急遽鳴り始めた大きな爆発音に驚き小さく体を震わせる
何事かと彼にしがみつきながらあたりを見回していると頭上から聞こえる笑い声
『っ!クラピカ!笑わないでちょうだい!いきなりのことだからびっくりしたのよ!』
「…ッそうだな…クッ…すまない…フフ」
『もう!恥ずかしいわ…』
どうやら先程の音は花火だったらしく空には何十もの火花が咲いていた
いつの間にやら腰に回されていた腕から暖かい温もりが広がっていく
いいや、夏のこの時期だ。
少し暑苦しく思わないといえばウソになる
『クラピカ』
「なんだ?」
『好きよ』
「ッ。そうか、感謝する」
『ふふ、クラピカは?』
返事なんて分かっていた
彼は口角を緩ませ私の瞳を上からのぞき込んだ
「もちろん、愛しているのだよ」
柔らかいものが自身のそれと重なるまであと数秒
H27.8.18