第92章 ヒソカ《13》
カラカラと硬いコンクリートを小さな車輪が滑る
『えーと、じゃがいもと人参、玉ねぎ……』
買い忘れがないかメモとカゴを交互に視界に入れ気づく
『あっ、お肉買わなきゃ』
動き始めた私の後ろをひょこひょこと長い前髪を揺らしながらついてくるその様子は幼い小動物のようで頭を撫でてあげたくなる
まぁ、身長と言う名の障害があるのだが…
「お肉ならこっちの牛肉にしときなよ♣︎美味しそうだろ?」
『これは、高いからダメ。こっちの豚肉の方が量もあるし味もいいし値段も安い!ねっ?いいでしょ?』
"値段なんて気にしなくてもいいのに"
と呟く彼とキラキラと目を輝かせる私
「僕が出すよ❤︎も美味しいやつが食べたいだろ♦︎」
『食べたいけど。将来の為にも……貯金は沢山…残しておきたいんだ』
「クックッ、僕との将来まで考えてくれているなんて嬉しいよ♠︎そうだねぇ、子供は5人ぐらい欲しいかな?」
『ッ!まだ早いよ!』
恥ずかしげもなく放たれた言葉に元よりも赤くなる頬はとてつもないほどの熱を帯びていく
喉を鳴らし笑う彼の姿はとても美しく時々不安になってしまう
いや、不安になる要素はほかにもある。
『…もし、家族ができたらさ。ヒソカ、今みたいにいろんな所にお仕事行けなくなるね』
「確かに♦︎。仕事、変えなきゃいけないね❤︎」
再び動き始めた私の隣には不定期に帰ってくる彼。
特殊な仕事をしているためほとんど同じ場所にいることはできないことは付き合い始めた当初から聞かされていた
今では"ほかに女がいるのでは?"と不安で仕方がない
『…ねぇ、明日の朝には行ってしまうの?夕方ではダメ?』
「仕事だからね♠︎時間は変えれない♣︎」
『そうだよね。我が儘言ってごめんね』
「いいよ❤︎僕も寂しい思いさせてごめんね♦︎」
謝るのならずっとそばにいて欲しい
その言葉を飲み込んで何度も使った笑顔を作り手を繋ぐ
『今日はずっと手を繋いでてもいい?』
めんどくさがられても仕方がないような私の小さなお願い
それを彼は嫌そうな顔ひとつせず承諾してくれる
『ふふ、じゃあ、帰ってカレー作ろっか』
「久々の手料理期待してるよ♣︎」
『ほっぺた落ちるほど美味しいカレー作ってあげる』
繋がれた手を揺らしながら私達は私達の家へと帰る
H27.8.10