第90章 イルミ=ゾルディック《12》
大きな広い部屋の小さなデーブルに額を打ち付け愚痴をこぼす
『もうさ、どうしたらいいのかわかんない。』
「……」
依頼書なのだろうか
沢山の紙を何度も何度も見返している彼
私の話などおそらく聞こえていないだろう
『最近やけに優しかったり会う時間がなかったりしたからまさかとは思ってたんたけどね…』
赤く腫れた目に再び涙が溜まる
昨夜、電話の向こうでに泣いたことはまだ記憶に新しい
ひらひらと紙をめくる音が私の耳をくすぶる
『2ヶ月ぐらい前にプロポーズしてくれたんだよ。』
綺麗な夜景を背景に指輪を差し出され泣いたのは夢だったのか
今となってはそんな気がしてならない
『なのにさ……まさか………男と浮気してるって何!?実は1か月くらい前からゲイに目覚めたんだよねって言われてはいそーですかなんていえるか!!』
勢い良く机に手を叩きつける
大きな音が部屋に響く中、彼は黙々と書類をめくる
頬を伝う涙。
あぁ、ここは自宅じゃないのだから昨夜のように泣き叫んでは迷惑になる
そんなことが頭をよぎり再度うつ伏せる
『…もうっ……意味っ…ッ…わかんない……』
嗚咽がもれうまく話せない
そんな私の頭上に手が触れる
「俺が新しい指輪買ってあげる。」
『……ぇ?』
突然の言葉に驚き涙が止まる
「指輪、俺が買ってあげる。」
『…な、何言ってんの?プロポーズみたいに聞こえるよ?』
思考停止していた私は数秒の間をあけて言葉を紡ぐ
絡み合う視線に少し恥ずかしさを覚え目を逸らす
「あれ?そう言ってるつもりだったんだけど伝わらなかった?」
首を傾げとんでもないことを言い出した彼に開いた口が塞がらない
「俺と結婚しよ?」
視界いっぱいにイルミの顔
あまりの近さに頭が回らない……
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