第85章 クロロ=ルシルフル《12》
嫌と言うほど体中についた傷に再び新しい傷がつく
なぜ除念の念能力を作ったのか
昔の自分に腹が立つ
「どうだ?涙をよこすきになったか?」
ナイフを片手にすました顔で問いかける彼
一体どうして人を傷つけていながらそんな顔ができるのだろうか
『はっ!あんたの顔みてたら虫酸がはしるよ』
「俺の質問に答えろ」
『…っ。………あんたにやるものなんかひとつもないね』
突き刺さるナイフに少し顔をゆがめるも涙なんて流さない
こんな奴に渡してたまるものか
「はぁ。涙のひとつぐらいお前にはなんの支障もないだろ?なぜ拒む」
なぜ?
誘拐、監禁して自分の体を傷つけるやつをわざわざ除念したいだなんて思うか?
そんなことないだろう?
私の血で赤く染まった手が頬を滑る
「除念さえすればお前は自由だ。」
『……役に立たなくなったら殺すの間違いじゃないの?』
口角を吊り上げ馬鹿にしたように微笑む
手首に巻かれた縄がくい込み痛む
黙った彼のその瞳が私だけを写している
こんな日が後何日続くのか……
考えただけで死にたくなる
H27.7.24