第75章 クラピカ《8》
どこか近くで雷が落ちたのだろう
部屋中の明かりが消え暗闇が訪れる
『はい、貴方に頼まれていたクルタ族って民族の情報。』
水に濡れた髪を鬱陶しそうにかきあげるその人は縁側に腰を掛ける私に黒く冷徹な瞳を向ける
「ありがとう。じゃあ、約束どおり君の望む歩ける足を差し上げるよ」
どこから取り出したのかわからない本を手に持ち何かをしだす
《『ところであなたの名前は?』》
《「俺はー-------------」》
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「!遅れてすまない。」
『ううん、私も今来たとこよ』
金色の髪に女性と見間違えるような美しい顔
少し息を荒げ走りよってきた彼の頬は赤く火照っている
『今日はどうしたの?何か話したいことがあるんでしょ?』
暗闇の中空を見上げると無数の星
これまで色々な土地を見てきたがこれほどまでに綺麗な星が見えるところは初めて来た
「ああ。は蜘蛛をしってるか?」
『……えぇ、あのA級賞金首のでしょ?』
「そうだ。では、クルタ族という民族はしってるか?」
『く……るた……族?』
どこかできいたその言葉に体中が反応する
嫌だ。何も……何も思い出したくない。
「まぁ、少数民族だったから知らないのもむりはない」
『あ、そう、なんだ。』
目の前で微笑む彼が何故か他人と重なる
そうだ、思い出した
「私はそのクルタ族の生き残りでな。私の同胞は蜘蛛に殺された」
黒く冷徹な瞳
雨に濡れた黒髪
「……私は、同胞の仇を討ち奪われた仲間の眼球を取り戻すためにハンターとなったのだよ」
クルタ族の情報と引き換えに私にこの足を与えてくれた人
あの人は確か……
《「俺はクロロ=ルシルフル。蜘蛛の団長だ」》
「そんな私だが、もっとのそばにいてたいんだ。愛してる。付き合ってくれないか?」
『………うん。私も愛してるわクラピカ!』
頬から伝う涙。
足とともに得たものは愛する人にいつ嫌われるともしれない恐怖
あぁ、そう言えばあの日もこんな暗闇だった
H27.6.29