第71章 クロロ=ルシルフル《10》
『ヒッ……や…ぁ』
目の前ではノコギリのような大きな刃物を持ち上げた男
その顔にはニタニタと気持ちの悪い笑が貼られている
「は、は、お前を殺して、あいつに俺の苦しみを味あわせてやる!」
『ごめ……なさ…ぃ…ご…め…』
視界が霞んでいくなか体を震わせ何度も謝る
勢いをつけ振り下ろされるその刃物
とっさに目を瞑る
「やれやれ、俺に直接かかってくればいいものを。なぜにばかり喧嘩を売る」
『……クロ……ロ…』
金属音、苦しむ音
それから愛おしい彼の声
うっすらと開けられた瞳から一筋の涙
「そう何度も泣くな。大丈夫だいつでも俺が守ってやる」
『うん。うん。。。あり…がと…』
恐怖で腰の抜けた私を抱き上げた彼の腕には小さな傷
私を守るためにできた傷だと思うと心が痛む
首に巻いた腕に力を込め強く抱く
『弱くて…ごめんなさい。』
風が頬をかすめていく
耳元で唸るその音は彼の声をかき消した
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「お前を守ることが嬉しいんだ」
H27.6.26