第63章 クラピカ《6》
『あ、もしもし?明日暇ー?ん?あぁ、お仕事かーそれじゃ仕方ないね。じゃね!ばいばーい!』
後半話を早めに切り上げようと早口で言い切る
携帯の向こうで何かをつぶやこうとしたその言葉を最後まで聞くことはなく通話を終了させる
「男か?」
『うん。明日暇だから遊びたかったんだよねー』
最新型の携帯をいじる私の前で背もたれにもたれかかるようにして座るクラピカ
私は似たような名前が入った電話帳を睨みつけながら簡潔に答える
相手の背後からは猫なで声の女の声がした
私よりそっちを優先する男なんていらない
「あんまり男をなめない方がいいぞ。後で痛い目に合う」
『ははっ、大丈夫だって。私より強い男なんていないし』
やっと見つけた名前。
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はぁ、っと小さなため息をつき布団へと身を投げる
「男と女ではもともとの力量は違う。本気でこられたらいくらお前でも勝ち目はない」
『何?それは私が弱いっていいたいの?』
「いや、少しは警戒というものをしたほうがいいと言っているのだよ」
私を弱者のようにみている彼に苛立ちが募りつい強い口調でいいかえした
だが、怒っていることになんの焦りもみせないその姿は余計に私をイラつかせる
落ち着け自分。
私は誰よりも強い
『……私は貴方や他のどんな男にも負けない』
目尻を強くつりあげ睨みつける
彼の端麗な顔立ちはまるで女のようで私が負けるなんて想像がつかない
「それは、どうだろな」
『っ!?』
いつの間にか馬乗りになった彼と視線が交わる
押さえつけられた両腕は少しも動かない
「好きな女の前で欲を抑えられるほど私は強くないぞ」
怪しく微笑むその顔はまさしく獣
H27.5.28