第59章 キルア=ゾルディック《5》
「俺、のこと好きだから」
『私もキルア君のこと好きだよ』
ふわふわと綿毛みたいな髪を揺らす
大事な大事な旦那様の弟。
よっぽどのことがないと嫌いになんてならない
「兄貴と俺どっちのが好き?」
『んー、どっちも好きだよ』
最近やたらと好きだといいに来る彼は甘えたい年頃なのかもしれない
いざ、甘やかそうと優しく抱きしめ頭を撫でてあげるとどこかへ消えていってしまうのだが
私の答えが不服なのか顔をしかめ鋭い目線をなげつけてくる
『……はぁ。どっちか1人なんて選べない私はキルア君もイルミもどっちも好きでどっちも大事』
「それは…………………」
『ん?なんて?』
視線を床へ落としボソボソっと呟く
もう少し大きな声で言ってもらいたい
「俺が、、」
「ただいま。」
彼の声にかぶさるようにして愛する旦那様の声
あぁ、そんなに震えなくてもイルミはあなたに何もしないよ?
フルフルと小刻みに震えるその様子は子猫のよう
『おかえりなさい。じゃあね、キルア君』
何も言えない彼の頭を撫で旦那様を出迎えにいく
聞こえなかった言葉なんて興味もない
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
"どっちも大事"
その言葉に思わず口が動く
「それは俺が兄貴の弟だからかよ」
小さな言葉は俺の気持ちと同じようにあんたにはとどかない
H27.5.21