第58章 イルミ=ゾルディック《8》
『お兄さん。誘拐は犯罪ですよ』
「うん、しってるよ」
私よりもはるかに高い身長のお兄さんに引っ張られるようにしてどこかへと連れてかれる
暗い路地に入ったり商店街を走ったり
かなり長い間動き回った気がするんだけどな
『お兄さん、どこへ向かってるんですか』
「俺の家」
そう答えたお兄さんの表情は全く動かずまるでロボットを見ている気分になる
一体家まで連れてってどうする気なのでしょう
『私の家、お金なんてもってませんよ』
「俺、金には困ってないんだよね」
『じゃあ、なぜ私は誘拐されているんですか』
今まで止まることのなかった足がいきなり動きを止めた
目線を合わせるためだろうか?
しゃがみこんだ彼と目が合った
「君と同い年の弟がいるんだよね。キルアっていうんだけど君は弟のお嫁さん候補。言ってる意味わかる?」
『つまり、私はどこの誰とも知らない人と結婚させられるんですか?』
「うん。そういうこと」
雪のように真っ白な手が頭をなでる
くしゃくしゃになった髪をてぐしでなおす
『とりあえず殺されないだけましですかね』
伸ばされた手にまた引っ張られ引きずられるようにしてお兄さんの家へ向かう
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大事な弟のお嫁さん候補
その小さな手を握り早足で歩く
「………キルにはもったいないかな」
12歳年下の彼女が恋してくてしかたない。
H27.5.16