第54章 キルア=ゾルディック《4》
右手を強く握りしめ奇妙な方向へ曲がった足を眺める
もう、痛みはない
「今日はおれ以外を写すその目とっちまおーぜ」
微笑む彼が片手に持つのは先の尖った棒
あぁ、私たちはいつから狂ってしまったのだろう
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《初めは普通のヤキモチだった》
「なぁ、今喋ってた男誰?」
『ん?あぁ、仕事の人』
いつの間にか隣に立っていた彼に少し驚きつつもそれを表に出さず応える
少しむすっとした可愛らしい横顔に思わず笑みが漏れる
「もう、俺以外と喋るなよ」
『はいはい、できるだけね』
ぎゅっとあたたかい手を握りながら私は隣を歩く
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《少しづつ悪化して……》
「昨日の夜俺に内緒で何処いってたんだよ」
『ど、何処にも行ってないよ!!本当だよ!信じっ!』
黒い闇を目に宿した彼の手は首に伸びる
いつぞやのあたたかみなんて感じない
呼吸ができない。。
苦しい。。
死ぬ。。
多くの言葉が頭をめぐり意識を手放しかけた瞬間勢いよく酸素が喉を通る
『ゲホッゲホッ!ハァ……ハァ……ゲホッ……』
「次やったは本気で殺すから」
苦しむ私に向けて放たれた言葉はあまりにも真実味を帯びていて私を脅すのには十分すぎた
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すでに暗くなった視界に不意に人の肌が触れる
「これで俺以外を見ることはなくなったな」
嬉しそうな声に少しの恐怖を感じ体をこわばらせる
『…………これで悲しむキルアを見ないですむ』
「はぁ?」
久々に笑った私の顔にはぎこちない笑みが浮かんでいるのだろう
離れた一瞬を狙い右手を体の中心に突き刺す
何も聞こえない暗闇へ落ちて行く感覚を最後に意識は途絶えた
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床に横たわる君は笑みを顔に浮かべている
「おい。起きろよ。なんでだよ!!」
静かな地下室に君の血の匂いが充満してる
H27.4.27