第50章 イルミ=ゾルディック《7》
嗅ぎ慣れた鉄の匂い
近付くたびに強くなる殺気
素早く風を切る音が聞こえ頬に傷がつく
「あれ、だったんだ。俺の仕事場に来るなんて珍しいね、どうかした?」
『………イルミに会いに来た』
長い足を綺麗に運び歩いてくる彼の手には先ほどまで使用していた針
右手に隠し持ったナイフに力を込める
「俺に?別に連絡くれたら会いに行ったのに」
『ううん。私が会いに行かなきゃ行けなかったの』
脳内で渦巻く”殺せ”の文字
殺らなくてはいけない。
イルミ=ゾルディックを。
ふらつく足で倒れこむように彼の胸に収まりナイフを振り上げる
「、そんなんじゃ俺のこと殺せないよ」
『でも、殺らないと』
私の手を掴み首をかしげた彼の長い髪が頬に触れる
傷口周辺に触れ痛む
相変わらず動かない表情筋、その顔から彼の考えを読み取ろうとするのは至難の技だ
「何?誰に頼まれたの?」
『言えない。命令だから。』
「……ふーん、操作されるなんて珍しいね。まぁ、俺が楽にしてあげるよ」
『えっ?』
トスっと心地の良い音とともに背に刺さる何か
一瞬の間に全身に広がるオーラ
消えゆく意識の中言葉を紡ぐ
『ご……めん……イルミに……め…わく……かけ…て』
伸ばした左手で彼の頬を撫でる
その手に力がなくなり地面へと垂れるその時まで抱きしめてくれた彼
”『…………愛してる』'”
その言葉はあなたに届きましたか?
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