第5章 感謝を伝える
どうしてこうなった。
わたしには仕事が残っているのに。
なのに何故わたしは縁側で、しかも三日月と、その彼の膝の上で日向ぼっこなんてしているのだろう。
「三日月、はなしてください」
お腹に回った腕から脱け出そうとしても、腕は強まるばかり…。
「これ、暴れるでない。主には休息が必要だと言っているだろう」
何なのですか、この神は。いつもじじいだからと周りに、特に短刀達にお世話という名の介護させているくせにこの力。
「わたしにはしごとがあるんです…!」
「仕事なら長谷部がやっておる」
長谷部…?なら、何故尚更わたしを呼びに来ない…?
「これは俺達から主へのぷれぜんと?と、いうやつだ」
プレゼント…?わたしに…?
審神者になるための修行しかしてこなかったわたしには無縁だと思い続けてきた。
それをわたしに…嬉しい、そんな感情がわたしの中にあったとは…だけどそれを表現する方法なんて知らない。
わたしが答え倦ねていると三日月が口を開いた。
「こういうときはな主、“ありがとう”と言えば良いのだ」
「ありがとう…?」
「ああ、そうだ。長谷部にでも言ってくるのが良いだろう」
わたしは頷き解けた腕の中から立ち上がり執務室へ向かう。
その後、本丸に長谷部の歓喜の叫び声が響き渡り、夕食のご飯に御赤飯が炊かれたそうな。
「はっはっはっ、よきかなよきかな」