第4章 兄と呼ばれて
「御手杵くんや」
聞き慣れた声に振り向けば、部屋の前で主が笑顔で手招きしていた。
滅多に部屋から出ない主が珍しい。
「どうした?」
部屋に引っ込んだ主を追って俺も部屋に入る。
「で?俺に何か用か?」
主の前にどかりと座りながら聞くと、主は何の前触れもなく予想だにしなかった言葉を口にした。
「御手杵くん。私のお兄ちゃんになっておくれ」
「…………は?」
まったく理解できなかった。お兄ちゃん?お兄ちゃんって一期一振のようなことだよな?俺が?そんな…何かの聞き間違いじゃ…。
「お兄ちゃん、になっておくれ」
…今度ははっきり聞こえた。間違いなく主の声だ。
「いやいやいや!俺が主の兄貴?!なんで?!」
「いや?何となく?」
しれっと言ってのける主は自由と言うか…本当に何を考えているのかわからない…。
「あ、これ主命だからね。御手杵お兄ちゃん」
そう悪戯っぽい笑顔で言った。
他の奴等に何と説明したらいいものか…。
でも、主が笑顔でいられるのならそれでもいいか…とか思う俺もつくづく主に甘いんだな…。