第3章 オオカミはすぐ傍に
変じゃないかな…?ひなたくんに渡されたときはすごく嬉しかったけど、本当は似合ってないんじゃないかとか頭の中でぐるぐるし始めた。
やっぱりジャージの方が…。
「あら?ちゃんじゃない!」
落としていた視線を上げれば、そこには嵐ちゃんがいた。
「お姉ちゃん」
「赤ずきんなんて可愛い格好ね~…ってどうしたの?」
「わたし…変じゃないかな?ちゃんと似合ってるかな?」
気分が落ちているわたしのことに気付いて声をかけてくれた。
顔には出ないようにしていたのに…。さすがお姉ちゃんだな。
変に誤魔化さないで、素直に悩みを打ち明けられるのもお姉ちゃんだから。
「何言ってるのよ!可愛いに決まってるじゃない!」
「本当?」
「本当よ。お姉ちゃんを信じなさい」
そう言って被っているずきんの上から優しく頭を撫でてくれた。
お姉ちゃんの言葉で一喜一憂するわたしは本当に子供っぽいな…。
ちゃんとお姉ちゃんの隣で胸を張って一緒に立っていたいのに。
「さっき会った晃牙ちゃんがオオカミ男なのはちょっと悔しいわね…」
「え…?」
お姉ちゃんはわたしに顔を近付けて耳元で囁いた。
「アタシがオオカミなら食べちゃうのに…」
耳まで熱くなるのがわかった。
頭で何も考えられず固まってしまったわたしから一歩離れたお姉ちゃんはニコリと微笑んだけど、その瞳には確かに熱を孕んでいた。