第2章 探索を始めましょう
私にはまだ、彼等に言っていないことがある。
それは、私にとって怪奇現象は日常であるという事実。
【06 ちいさなずれ】
「赤司君、これから何をするつもりですか?」
「そうだね。ここにいる人間が僕等だけだと仮定して、とりあえずは校内の探索から始めるべきだろうな」
赤司と黒子君の会話に、私は首を傾げて手を挙げる。
「質問。ここから出るっていう選択肢はないの?下手に調べて化け物と遭遇するより、そっちの方がよくない?」
「それは真っ先に試して不可能だった。この校舎の一階を調べただけだが、どの扉も窓も開かなかったからね」
「そっかー…ん?」
違和感を感じて疑問符が口をつく。
しかしその違和感は、あっさりと解消された。
私を助けた彼…宮地君の言葉で。
「開かないことはないだろ。俺、窓破ってるし」
「「あ」」
「それだ」
廊下を飛んだゴミ箱が、テケテケごと窓を破った瞬間を思い出す。
そう、確かに窓は破られていたのだ。
「破ろうとすれば開く。もしくは上層階なら開く…とか?」
「一階は敦が椅子で破ろうとして不可能だった。可能性があるなら後者か、他にも条件があるのか」
「へー…て、待って。いつ調べたの?私、ここに来てすぐにテケテケに追いかけられて、宮地君に助けられたんだけど」
「…なんだと?」
「…これは、時系列を整理した方がいいかもしれませんね。それと、阪本さんが遭遇したというテケテケについても、情報をまとめましょう」
「あ、だったらついでにさ、この学校の七不思議とかってねぇのかな。怪談的な噂とか。テケテケみたいなのがいるんなら、他にもいるかもしれないじゃん。どうですか、阪本さん?」
「七不思議はある。私は5個までしか知らないけど、それでいいなら教えるよ」
はい、と挙手した高尾君に同意して頷く。
七不思議が具現化しているというのは、私の中では確定事項だったから大して気にもしていなかったけれど…確かに共有しなければいけない情報だろう。
黒子君が黒板の前に立って、丁寧に文字を書き始めた。