第12章 理由
私はマスクをして、渋谷さんの後を歩いた。
すばるさんは、何処に向かうのか、スタスタ歩く
「あのぉ、何処に行くんですか?」
私が聞くと、笑顔で振り向き
渋谷「エエとこ!」
あ、あのぉ、渋谷さんの良いところは
ハッキリ言って怖いんですが....
私が、一人で恐怖してると、渋谷さんは楽しそうに、神社の境内に入って行った。
お参りでもするのかなぁ....
私が不思議に思いついて行くと、彼は神社の境内の真ん中で、ポケットに持ってた鳩の餌をまきだした。
渋谷「ここやったら、怒られんやろ?」
えっ!!!!
そんなにしたかったのか!
ってか、まだ餌を持ってたのか!
私が唖然としてると、鳩が餌に釣られて
一羽、また一羽と渋谷さんの所に集まって来る、
彼はそれを何とも言えない寂しい表情で見ながら餌をまく。
「....すばるさん?」
渋谷「俺ら、デビューの時は、この鳩みたいに、少なかってん、応援してくれてた人。
それが、こんな風にドンドン増えて....」
渋谷「俺は、あん時から色んな成長はしたけど、俺は何も変わってないのに、週刊誌は勝手な事を載せる...」
辛そうな、渋谷さんを言葉も出ずに私は聞いていた。
渋谷「事務所は何も知らんと、自粛しろって言うし、俺一人やったら、どうなってもええけど、仲間まで迷惑かけられんし....」
彼が逃げ出した理由が少し見えた気がした。
私は俯いて鳩の餌を握りしめて、辛そうな彼の側に行き、無理やり餌を取り上げた。
そんな私に彼は驚いた顔をしたが、知らん顔して代わりにまきながら
「この鳩さんは、分かってるんじゃないかなぁ?
すばるさんの優しさを...
だから、何を書かれても離れないんじゃないかなぁ?」
渋谷さんは、餌をまく私を見つめていた。
「いいじゃないですか?週刊誌に何を書かれても
私は目の前の渋谷さんを信じます..
たぶん、この鳩たちも....そして、すばるさんの仲間も....」
私の言葉に、渋谷さんは少し笑い
渋谷「鳩は字が読めんで!」
だからぁ!例えだって!
あれ、渋谷さん少し涙目になってる?
えっ?
鼻をすする渋谷さんに、私はわざと見えない振りをして餌をまき続けた。
鳩は嬉しそうに食べ続けてくれた。