第2章 背負うもの
2時間後、私は礼装を整えて神ノ島と
本島を繋ぐ橋のたもとへ来た。
歩くたびにシャラシャラと髪飾りが揺れた。
裾が絡まないよう慎重に捌きながら歩く。
これから行うのは、霊祓い。
振り返ると、そこにいた朝陽は承知して頷いた。
彼も同じように祈祷師としての礼装に身を包んでいる。
ふわりと温かい空気が私の周りにまとわりつき、
ふっと消えた。
私の陰の気を抑え込んでいた、朝陽の陽の気が解除されたのだ。
体の中に溢れる気を、集中して体に纏わせる。
「ふう.....よし」
目を開くと、そこはさっきまでの神ノ島ではない。
同じ場所だけど、違う。
今私が見ているのは『向こう側』。
同じ場所にありながら、別次元を覗く――。
それは、私と朝陽の持つ特別な力だった。
空中には、まるで空を覆う勢いで大量の霊魂が浮遊していた。
神ノ島には、なぜか行き場を無くした霊魂が集まってくる。
それを『憑け』て『祓う』のが私と朝陽の役目。
代々神ノ島を治めてきた、神島家に生まれる者の運命。
【陰】の気を持つ巫女、【陽】の気を持つ祈祷師。
まずは、巫女が霊魂を惹き付け、自身の体に霊魂を憑ける。
結界の張られていない領域へ、私はゆっくり歩を進めた。
「美夜、無理しないで」
朝陽の声に、明るく手を振り返す。
例えるならトプン、とでも言いそうな感覚ののち、
私は完全に結界の外へ出た。