第23章 正体
倒れた大倉の頭に、忘れていた記憶が流れ込んだ。
<昔、僕は理性を失って
この女に牙を向き、ひっぱたかれたんだ。
吸血鬼にすら怯まず、僕らのために
涙を流してくれた。
それから、彼女に神の存在を教えられた。
救いの道を...
そして彼女は俺らを救おうと...彼女?...この女?...誰?...誰なんだ....)
大倉「うわぁぁぁ!!!!!」
頭を抱え、転げまわる大倉。
心配している安田を横に、
横山はゲストの私に目で合図を送り、私は頷いた。
その途端、横山は躊躇なく、私の腕に牙を立て大きなキズを作り、大倉の口に血を流させた。
大倉「ゴボッ……」
口から血を吹き、苦しむ大倉。
大倉「横…山くん……何で…………」
真っ赤な瞳は、怒りに震えていた。
横山「………こうなる事も考えていた……」
冷たく横山は言った。
「私は貴方を救いたい....」
腕のキズの傷みに絶えながら私は血を彼に与えた。
横山「...その血の味を知ってるのはお前だけだ...
あの夜、仲間に出来なかった女の血の味を...」
横山は冷たく大倉に衝撃の事実を告げた。。
大倉「!!!!!」
大倉の顔が大きく歪んだ。
安田「横山くん、どういう事なん?えっ?」
意外な言葉に安田もが驚いた。
横山「答えはその味や、2度目やな?
味わうのは...」
大倉「……………」
焦点の合わない瞳で、大倉は私を見つめた。
横山「………………」
恐ろしい程の沈黙だけが空間を包んだ。
大倉「......彼女が....」
大倉はこの事実を信じられない顔でいた。
横山「あの女の魂はもう天に昇ってたんだよ、
だから目覚めなかったんや。
ただ身体だけが生きてるだけなんや、
今も...だから眠ったままなんや、
あの時のキズも治っていないしな..」
大倉「.........」
横山の言葉に、大倉は言葉を返せなかった。
横山「お前の彼女を目覚めさせたかったら、
その女を殺せ。そうしたら目覚めるだろう。
魂は眠っている身体に戻るから...。
お前の願いは叶うよ..」
横山の冷たい言葉に、誰もが耳を疑った。
横山「殺す、殺さないはお前が決めろ...、
これはお前自身の問題やからな。ヤス行くぞ」
横山は冷たい視線を大倉に送ると、
安田と共に私達の側から消えていった。