第14章 二人だけの時間
大倉「眠っているみたいでしょう、」
背後から優しく語りかける大倉。
大倉は、静かに棺を開けた。
膝をゆっくりと屈めると、
愛おしそうに女性の頬を撫でた。
大倉「彼女は吸血鬼になった僕を、
唯一 愛してくれて、救おうとしてくれた...」
大倉は、悲しそうに撫で続けながら
私に話してくれた。
私はそれを黙って聞いていたが
不思議な気持ちにかられた。
大倉「しかし、許されない恋には、必ず酬いがくる。
その酬いで彼女は命を落とした...。
僕を助けようとして...」
私は、彼の悲しみに
どう応えるべきか分からなかった。
ただ聞くことしか出来なかった。
でも女性を羨ましいと思っている自分がいた。
こうなっても愛されてる彼女を...
大倉「横山くんが、僕の悲しみを和らげる為に
ここを作ってくれたんだ、
二人だけで、こうしていつでも会えるように、と.....」
大倉は、愛しそうに彼女を見つめ続けながら話した。
「....ずっと眠ってるの?」
私は、彼の横に立ち尋ねた。
大倉「命を奪われた時に、
僕が噛みつき、彼女の命を救おうとした時からずっと......」
その時を思い出したのか、瞳が潤んでくる大倉
「......えっ?」
大倉「....本当なら、
吸血鬼になって目覚めるはずなのに、
目が覚めないんだよ、いつまで待っても.....」
そう言うと、静かな冷たい目で私を見つめると、
涙を流した。