第2章 宮崎健治
宮崎は小さく息をついた。
ネクタイを緩め、ワイシャツの一番上のボタンを外す。
ー次は土井中、土井中です。お降りの方はお忘れ物のないようお気をつけください。
車窓のダミ声がブランデンブルク協奏曲をかき消す。
そのまま協奏曲は終わってしまった。
宮崎はイヤホンを外し、太い指で器用に結び、イヤホンをスーツのポケットに入れた。
電車のドアを開けようと「開」のボタンを押した。
モーセのようにドアが左右に開く。
外は、雪が降っていたのだろう、ホーム一面微かに白くなっていた。
宮前は、早足でホームを歩き、駅員のいない改札を通り、切符捨て場で切符を捨てた。
そしてスーツの上着にシワを伸ばした。
息を吸い、自宅へと急いだ。