第8章 映せる景色
ネット際、月島と山口の目の前で、おれは走る方向を変えた。
月島/山口
「⁉︎」
センターじゃなく、レフトにダッシュする。
木下
「Σ⁉︎えっ⁉︎何だ⁉︎今の何⁉︎」
暦
「速い!」
レフトで跳んで、おれは目を瞑った。
せーので跳んで、長身の選手より劣るなら…
1cmを、1mmを、1秒速くてっぺんへ‼︎
そうすれば、今この瞬間だけ…“ここ”が、一番高い場所。
─目の前に立ちはだかる、高い高い壁…
その向こうは、どんな眺めだろうか…どんな風に見えるのだろうか…
手にボールが当たった瞬間、おれは目を開けた。
おれ独りでは、決して見る事の出来ない…
これが──頂の景色。