第8章 それはきっと、
今日は日曜日。
珍しくバスケ部はオフの日で、その休日を使って心結と夢は遊びに出かけていた。
長時間歩いたため、今はカフェで休憩中。
「……夢さ、言わなくていいの?」
「なにを?」
「好きだって」
「誰に?」
「和成に」
高尾の名前を出した途端、夢は飲んでいる紅茶を喉に詰まらせて咳き込んだ。
「いきなりびっくりしたぁ…」
「…だってさぁ、夏祭りがあってからもうしばらく経つよ?何も進展ないじゃん。少し話すようになっただけで」
「わたしは高尾くんと少しでも話せればそれで幸せで、別に付き合いたいなんて…」
「やっぱり、付き合いたいって思ってんじゃん!」
夢は恥ずかしそうに否定するが、満更でもなさそう。恥ずかしさを取り払うようにコホンと一つ咳払いをした。
「そんなんじゃ、いつまで経っても進展がないまま卒業しちゃうぞー」
「まだ二年あるもん!心結ちゃんこそ!」
心結はコップに注がれているコーヒーを一口飲んだ。飲み慣れているコーヒーがやけに苦く感じる。
「…でもね、真ちゃんと和成と、いっつもバスケしてて本当に楽しいんだ。ただバスケしてるからってだけじゃなくて、秀徳に入ってからさらにみんなでバスケすることが楽しくなったの。」
「みんなすごい人たちだから?」
「それもあると思うんだけど、真ちゃんといるといつも特別を見せてくれてほんとにすごいと思うんだ。バスケのプレーもすごいけど、あの性格も面白いし」
「……それって、緑間くんのこと好きなんじゃないかな?」
「うーん、わかんないけど、多分違うと思う。真ちゃんといるとドキドキっていうよりワクワクするんだ」
「確かに、緑間くんはちょっと変なところもあるけどバスケも勉強もできるし、すごいよね。でもなんていうか近寄りがたくて…」
「たしかに、そういうところあるよね。でもほんとはすごく優しいんだ。」
コーヒーをスプーンでくるくるとかき混ぜる。
それから心結はコップのコーヒーを飲み干して答えた。