第6章 此処から
春は過ぎ、季節はすっかり夏に向かっていた。
この前まで暖かかった日差しは照りつけるような太陽に変わっていき、だんだんと運動するには厳しい季節になってきた。バスケも室内競技とはいえ、少し動いただけで汗が滲んでくる。
だがインターハイの予選が近づくにつれ、練習はいつにも増して過酷になっていった。
6月になると、待ちに待ったインターハイ予選。東の王者秀徳は当たり前のように順調にコマを進めていった。
と、思われたがAブロック決勝でバスケ部創設2年目の新参校、誠凛高校に激闘の末惜しくも敗北、まさかの事態となりインターハイ出場を逃した。まさに3年ぶりのことだった。
「少し外に出てきます」
悔しさに涙ぐむ部員を尻目に、緑間は1人ロッカールームを出ていった。
「…はんっ 負けたってのに覚めたもんだぜ」
「…まさか。…何も感じてないはずねぇすよ」
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『じゃあ切るぜ』
「ああ」
緑間は土砂降りの雨の中にいた。
携帯電話でかかってきた電話に出ているとなんとも悲壮感に襲われる。
初めての敗北だった。
言葉では言い表せない感覚で、納得したくなかった。
だが冷たい雨に濡れているとそれが現実なんだと突きつけられる。悔しいというよりも、もはや無に近かった。
まさか、負けるなんて。
敗北など考えてもみなかった。