第15章 緑とオレンジ
「高尾くん!」
「…はぁっ、探したんだぜ!」
走ってきたのか、息が上がっている。
なぜ今ここに高尾がいるのか全く分からなかった。
「なん、で…」
「もしかしたら先歩いてんじゃねーかって思って走ってきた!そしたらいたからさ、良かった」
いつもと変わらない高尾の笑顔に動揺した。反対に怖いと思ってしまう。
「…言いたいことがあったんだ。最近話してなかったからさ!」
言いたいこととはなんだろう。
言われる覚悟はできているが、何を言われるか怖い。
けれどそんな不安とは裏腹に、高尾の言葉は意外なものだった。
「…あん時はごめんな。…その、怖かった、よな」
「……」
「誰にだって言いたくないことの一つや二つあるよな。なのに追い詰めて悪かった。」
「………っ」
違う。
謝らなきゃいけないのはわたしの方なのに
なんで、
夢は握りしめた手に力を込めた。お守りも一緒に。
「だから夢…」
「なんで高尾くんはいつも、」
なんでいつもこんなに優しいのだろう。
いつも迷惑ばかりかけて、嫌な思いばかりさせているのに。それが嫌だから自分からわざと高尾を避けて遠ざけていたのに。
「ごめんなさいっ…わたしやっぱり、」
「…?」
「わたしじゃ心結ちゃんの代わりにはなれない……っ」
そう言うと、夢はお守りを手に握りしめて駆け出した。ただその場からいなくなりたい一心で。
「夢!」
高尾の顔を見ると泣いてしまいそうで辛くて、今まであったことも全部思い出したくなくて何も考えずに家に向かう道路に飛び出した。
「ちょっと待て!夢!止まれ!」