第15章 緑とオレンジ
出されたパスは誰にも邪魔されることなく見事に緑間に。
渡ったボールを緑間はそのままシュートした。その途端、ボールは大きなネットを揺らす。
あのパスワークはサッカーでも健在だった。
シュートが決まり、自陣に戻って試合が再開してもその勢いは変わらない。クラスの男子からパスをもらった緑間は、敵をかわしてから高尾にパスを出す。
ボールをもった高尾はそのままドリブル突破でゴールを決めた。
「見てたけど、すごかった!」
「真ちゃん、サッカーだとオレにもいっぱいパス出してくれるからさ〜」
「点を取るためなのだよ!」
「二人ともサッカーもうまいんだね!」
高尾は照れくさそうに笑うと、緑間は横でふんと鼻をならした。
「じゃあ真ちゃんっ!今度どっか遊びに行こ!」
「あぁ、」
背の高い緑間に目線を合わせるように、心結は少し背伸びをして言った。
ニコッと笑うと、緑間とちょうど目が合う。
その仕草に、心なしかドキッとした。
「………」
三人の一番後ろを歩く夢。
後ろからだとよく分かる。
高尾が何を見ているのか、何を思っているのかも。
高尾は何も言わず、ただチラッと前を歩く二人を見てすぐに視線を落とした。
一瞬見えたその高尾の瞳が夕日に照らされて、夢の目にはなんとも切なく映った。
高尾くん……
「高尾くんっ」
「んあっ?」
いきなり声をかけられたことに驚いたのか、高尾は一瞬ビクッと体を震わせまん丸の目でこちらを見た。
「高尾くんもまたすごいところ見せてね」
「……あぁ」
ニコッ
振り返った時に見た笑顔は、間違いなく寂しそうに見えた。
「………………」