第5章 初めてのデート
次に彼女が家に来たのは、ゆうに1か月以上経ってからだった。
兄さんと一緒に現れた。
ホタルの好きな人ベスト3。
1位、母親。
2位、彼女。
3位、月島のベッドの上。
彼女の声に、ホタルはベッドの上から転がるように駆け出す。
「ちょっと……」
ヘッドフォンを外しながら、変わり身速いヤツに苦言を呈する。
今の今まで人のお腹の上で寝てたくせに。
下でワイワイ声がする。
母親は、彼女が来ると喜ぶ。
この前は「娘がいたら」……とため息をつかれた。
階段を上がってくる音がする。
兄さんだ。
明るくて友達の多い兄さんは、なんでもみんなで一緒に……がモットーらしい。
部屋をのぞかれる前に、と部屋を出る。
と思ったら、彼女だった。
「あ、蛍くん」
「珍しいね、2階にあがってくるなんて」
「うん、ちょっと話したいことがあって」
「なに?」
「……うん、あの……」
「もしかしてこの前みたいに……」
「えっ……」
「シテほしい?」
わざと耳元でささやく。
「ち、ちがっ、そんなんじゃないからっ!」
そんな必死で否定しなくても……
「じゃあなに」
「あの、今度蛍くんがお休みで部活がない日に、一緒にどこかにいけたらな、と思って」
「それってデートに誘ってんの? ずいぶん積極的になったんだね」
「え、ちが……う、うん、まあ……」
「なに、その「まあ」って」
「……ごめん、あんまりまるっとお休みってないだろうし、忙しいよね」
忘れて、と慌てて階段を下りてく腕をつかむ。
「別にイヤなんて言ってないデショ」
「でも…」
「自分から誘っておいて、なにその引け腰態度」
こっちに遠慮するような態度にイラっとする。
「そういうのウザイから」
「……ごめん」