第10章 思い出
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電話の音で目が覚めた。
さっきまで抱き締めていた彼女はもう居ない…
ベットが広く感じられて、寒い…
ほとんど寝てない頭を起こすため、熱いシャワーを浴びる。
身体中に彼女の記憶が残ってる。
はにかんだ笑顔も…
彼女が嫌いだと言う声も…
抱き締めると、嬉しそうに抱き締め返してくれる腕も…
感度が良い身体も…
俺を呼ぶ唇も…
一般の人とは別に用意されたモーニングを食べに下階に下りる。
乗り込んだエレベーターには誰も乗ってなくて…静かに扉が閉まる。
吹き抜けになってるエレベーターホールから下を見るとロビーに集まるお客さん達。
チェックアウトの時間が近付いているのか、荷物を持った人達がいくつもの塊を作っていて、1つに彼女が居た。
友達と楽しそうに話してる。
横尾:「あ、おはよー♪太輔。何見てんの?」
手すりまで近づけないから、見えるギリギリで動けずにいた俺に渉が声をかけてきた。
太輔:「…おはよ。もう帰るみたい…」
横尾:「ん?あ、昨日の…楽しかったね♪」
太輔:「ん…」
横尾:「…どした?泣きそうな顔して…大丈夫?」
太輔:「…」
太輔:「…好きになったらダメな人って居るんだな…」
横尾:「…太輔…」
渉は何も聞かず、そこに居てくれた…
ホテルから出ていく彼女をただ、見つめるだけの俺の傍に…