第1章 夕日
酷く風が冷たいなぁ、とは思った。いや、風が冷たいのではなく、心にポッカリと空いた穴が原因かもしれない。
地上に高く聳え立つ白壁。今は夕日に照らされ、外の世界と一緒に赤く燃え盛っている。その一角に、リヴァイはいた。
「リヴァイ……」
声をかける。リヴァイは無言のままだ。
もしかしたら、悔やんでいるのかもしれない。一緒にここまできた、仲間のことを。
リヴァイの隣に、も腰を降ろした。三角座りして、壁の外を見る。鳥を追いかけるように、1匹の巨人が走っている。
は目を逸らした。
「すまなかったな」
「何が?」
「あいつらの事だ」
“あいつら”とはイザベルとフォーランの事だろう。いや、もしかしたらの姉であるイザベルの事だけかもしれない。とにかくリヴァイは先の戦闘で、亡くした2人の事を謝っているのだ。
(何で、リヴァイが謝るんだよ……)
悪いのは巨人であって、リヴァイではないのに……。そう思っていても、にはそれを口に出す事はなかった。リヴァイに「お前は悪くないよ」と言ったことで、彼がそれを聞き入れる事などしないだろうし、なんとなくだがそう言うのも違うような気がしたからだ。
だからは、
「うん……」
リヴァイの顔を見ずに、短くそう返すとまた壁の外へと広がる世界を見た。
緑の草原は相変わらず、轟々と燃え盛っている。