第2章 イカれ菓子屋のお茶会/×影山飛雄(ハイキュー!!)
2月14日、といえばアレである。
誰かの誕生日、とかそういうのでなくて、ああ、なんていうか、バレンタイン・デイだ。
突然だが、私は今究極の選択を迫られていた。
手で握った所謂本命チョコレートを、私の想い人のロッカーの前でうろうろしながら振り回している。
想い人の出席番号は調べてある。
だから、ロッカーはこれで間違いない。絶対に17番だ。
烏野高校は出席番号が男女で混ぜこぜだから、苗字がカ行の彼でも17番だ。
そもそも、彼はチョコレートなんて好きなんだろうか。
私が見る時には、むやみやたらとグングン身長が伸びますよ〜系の飲み物をすすっている。
どうしよう、チョコレートにカルシウムを混ぜ込むべきだったか。
「なぁ」
でもカルシウムってどうやって混ぜ込むんだろう。やっぱり、煮干しを砕いて湯煎したチョコレートにガシガシと……
「おい、柚香」
うろうろと歩き回る私の後ろでは、影山飛雄が偉そうに足を組んで座っている。
足を組んだら骨盤を悪くするんだよ、とこの間言ったばかりなのに、やはり人の癖というのはそう簡単には治らないらしい。
腰を悪くするよ、と再三の注意をしてようやく彼は普通に座った。
「俺、もう部活行ってもいいか?」
はぁ、と溜息をつきながら影山はうんざりしたように言った。
「ダメ。絶対ダメ。バレー部が終わる頃には教室ぜんぶ施錠されてるもん。これは、今日飛雄が受け取らなきゃ意味がないの」
「だったら、んなメンドクセェことしてねぇで今渡せよボゲ」
自前のバレーボールをクルクルと回して、弄ぶ。
彼はすでに練習着に着替えていて、上には長袖を羽織っているといっても、下はバレー用の短い短パンだ。非常に寒そうである。
確かにちょっとかわいそうかな、と思えてきた。
「もうちょっと、もうちょっとだけ悩ませて。」
ふぅ、と深呼吸をして、17番のロッカーを見つめる。
このロッカーの中には、きっと彼のきったない字で署名された教科書や、私が勝手に突っ込んだ膝掛け、私が勝手に突っ込んだ割り箸(私のママはよくお弁当に箸を付け忘れる)、それから彼の学校ジャージとかがしまってあるのだろう。