第2章 イカれ菓子屋のお茶会/×影山飛雄(ハイキュー!!)
もう一つ、私の努力の結晶を摘む。彼の親指と人差し指はココアパウダーで汚れていた。
「案外うまい。」
「案外ってなによ。すごく失礼。」
ぷうっとむくれた私は彼の首に腕を巻きつけた。
「あ、こっちは苺味か」
むぐむぐと口を動かす影山は正直とてもとても可愛くて、口元すらパウダーで汚れたその姿に私は彼を無性に抱きしめたくなった。
「あー、もう飛雄ちゃんなんでこんなに可愛いの?」
むぎゅううう、と抱き締めると「やめろボゲ気色悪ぃ! ちゃん付けすんな!」と口汚く罵られた。
影山の手を取って、その人差し指をギュと握る。
私の親指を彼の人差し指に執拗に擦り付けて、ココアパウダーを落としてやった。
親指も同じ要領で綺麗にしていく。
「残り一個、私が食べさせてあげよう」
おそらく苺味の最後の一粒をつまみあげ、影山の口元まで持っていく。
いぶかしげに眉間にしわを寄せる彼も、観念したのか小さく口を開けてな真っ赤な舌と綺麗な歯を覗かせた。
相変わらずの赤い頬に私の胸は高鳴りを隠せない。
満足した私は、手に持ったチョコレートをその可愛らしい口の代わりに自分の口の中へと放り込んだ。
「あ、おいしー」
「……ぜってえやると思った。」
彼は半ば呆れ返ったように言って、私の手を取ると自分の口元のココアパウダーをあろうことか私の手で拭きよった。
「私の手、ティッシュじゃないんですけど……」
「ああ、悪い。俺には鼻セレブに見えた」
「適当なこと言わないでよ」
少しだけ笑うと、影山は上体を倒して私に軽く、本当に軽く口付けた。
やっぱり、今日の影山飛雄はおかしい。イカれている。いつもと違う。
私がどうしちゃったの? と言う前に彼は慌てて私を膝から下ろし、全速力でその場から消えた。
「……あれ、もしかして偽物だったのかな」
私が考え込んでいると、廊下を駆ける音が今度はこちらに近づいてきた。
ひょこ、と顔をのぞかせたのは先ほど逃げた影山だ。
「チョコ、ありがとう。美味かった!」
それだけを言い逃げして、また廊下から走り去る大きな音が聞こえてくる。
影山飛雄がおかしいんじゃない、今日という日がおかしいんだ。
それじゃないと、私の真っ赤な顔の説明つかないじゃないか!
fin.
爆発すればいいのにね