第9章 無理のない脱走計画を
「ふばっふぇりっ――ちゃ――」
速い、凄まじく速い。ついていけない。
「頑張って!」
「待っゲホッ! ガハッ!!」
「公子ちゃん!?」
すでに私は虫の息だというのに、フェリちゃんは呼吸を乱してすらいない。
両脚がかつてないほどの速さで動いていた。
なんというか、仕方ないのだがフェリちゃんに手を引かれているせいで、急勾配の斜めな体勢だ。
一瞬でも脚を交互させるリズムが狂えば、途端に転びかねない。
うしろを振り返り追っ手を確認でもしたら、私はめでたくすっ転ぶこととなるだろう。
「もうこのような不覚はとりません」
「待て、いつの間に刀持――って抜刀すんな!! 菊と争うつもりはねぇしこっちは丸腰――」
「……――覚悟」
「ちょっ、やめっぎゃあああああああああぁぁぁぁぁぁ!」
背後から断末魔が上がる。
なにこのカオス。