第7章 目覚めた場所は
四人席に案内され、レディーファーストよろしくルートに椅子を引かれる。
さすが本場、とドキドキしつつ腰掛けた。
私以外は席を立っている。
ルートは書類・荷物確認。
フェリちゃんは料理運び。
「……」
現実感が、ない。
お洒落な装飾が施された室内も。
柔らかに降り注ぐ照明も。
あからさまに美味しそうな料理も。
にこにこしっぱなしのフェリちゃんも。
そして眼鏡をかけ、眉間にしわを寄せて書類を睨んでいるルートも。
映像を見ているかのように、なにもかもにリアリティが欠如していた。
「着替えてくるね」
運び終えたフェリちゃんは、どこかの部屋へと消えていく。
ルートがファイルやらなんやらを手に、私の前に座った。
……と、ルートが突然ハッと入り口に目を向けた。
私の席だと、間に壁があって少し見づらい。
「どうしたんですか?」
瞬時に私に向き直ったルートの顔は、苦々しくも目が据わっていた。怖いです隊長。
「あの――」
「そこのクローゼットに隠れてくれ!」
「はっ……はいぃ!?」
突然なにを言い出すのか。
有無を言わせぬ口調でルートは言った。
音量を抑えているのが逆に怖い。
「早く隠れろ!!」
「はっはひ!!」
上官命令だ! というかんじで逆らえず、わたわたとクローゼットに押し入る。
普段は客のコートを収納しているような、アンティーク調のクローゼット。なにが悲しくてこんな場所に閉じこもらならんのか……
「静かにしてるんだ」
「はい……」
少し泣きそうだった。誰か説明を……私“はい”しか言ってねぇよ……
しかし、無情にも扉が閉められ、視界が真っ暗になる。
と同時に、
「ハロー! お邪魔させてもらうぞっ!」
ドアを開ける鈴の音とともに、そんな声が響いた。