第7章 目覚めた場所は
「……ここ、は……」
気がつくと、真っ白な空間にいた。
縦も横も奥行きも高さも、なにも感じられない。
ただのっぺりと、どこまでも白く私を包みこんでいる。
そんな空漠とした広がり。
薄気味悪い。
そして純白ゆえに、どこか毒々しい。
「こんにちは」
「っ!」
背後で声があがり、私はハッと振り向いた。
完璧なまで隙間ない白に、人影が色をなしていた。
年齢は18、19くらいだろうか。
透明度の高い瑠璃色の髪、深海のように深く静寂をまとった瞳、肌は新雪のごとく白く、細身で長身だ。
そして、これが“ゾッとするほど美しい”という感覚なのか。
目の前の人物の微笑は、人ならざる美しさと儚さを持っていた。
、、、、、
「初めまして。また会えて嬉しいよ」
……なにを言い出すんだこの人?
「誰? ここはどこ?」
「僕は誰でもないし、ここはどこでもないよ」
「いやぁ……」
こんなやつキャラクターにいたっけ? 中二病をこじらせているのはギルくらいだし……
しかし外見の近寄りがたい冷然さとはうってかわって、彼の語気は親しみやすいものだった。
「公子の好きなように呼んでほしい」
「どうして私の名前……」
彼は微笑んだだけだった。
ドキッとする。こんなふうに微笑まれると、どうしていいか困ってしまう。
彼は、私がそうあたふたするのをどこか楽しんでいるようにも見えた。なんとも意地悪い。
「じゃ……イオンなんてどう?」
「そのこころは?」
別になぞかけじゃないんですが……
「誰でもない“one”を並び替えて“eon”でイオン」
少し恥ずかしいがドヤァとする。
目の前の人物はくすくす笑って、賛同の意を示した。
……なんか、遊ばれてないか私。